戦後まもなく嵐山頂上から東南東斜面に造成された初期のスキー場は、1年で閉鎖され、その跡地は特に人為を加えないまま、周囲の環境と同化して自然林が回復してきています。20062月に閉鎖された嵐山市民スキー場跡地も、嵐山本来の森林環境に復元し、その過程を市民とともに見守ることが、この場所に最もふさわしい活用方法と考えます。

 

嵐山市民スキー場跡地についての提言

 


旭川嵐山ビジターセンターは1989年、国内初の民営ビジターセンターとして、嵐山対岸のオサラッペ川沿いに建設され、市民有志27人の運営委員会により、自然観察会、嵐山縦走ハイキング、アイスキャンドル、キッズアートなどの拠点として活動を続け、嵐山の自然を見守ってきました。

嵐山市民スキー場は2006年(平成18年)2月に閉鎖されましたが、私たちは、都市近郊の貴重な自然を残す嵐山の一部として、市民スキー場跡地の将来に大きな関心と危惧を抱いています。

嵐山は川のまち・旭川を流れる石狩川とオサラッペ川の合流点付近に位置し、地質的にも特異な神居古潭帯にあり、旭川市の自然保護調査によると、市内の植物の約66%が自生するなど、多様な自然生態系が市街地のすぐ近くに残されている貴重な場所です。また古くからアイヌの人々の聖地でもあります。一帯は、水源涵養、保健休養、風致などの保安林や、鳥獣保護区に指定されています。

嵐山公園については、1990年(平成2年)に市の「嵐山公園整備懇話会」が嵐山公園整備基本構想で、「豊かな自然と歴史、文化の保存」「郷土の自然、歴史学習の場として活用」「住民の共有財産として、嵐山の自然、文化を守り育てる意識を高める」を理念とするよう提言し、保護計画の基本方針を次のように定めました。

・嵐山本来の自然と歴史を大切にし、その自然生態系を保護すること。
・貴重種、稀産種の保護を行う。
・嵐山本来の自然を守るため、外来種(生物)を持ち込まない。
・樹木の伐採は管理上やむを得ない場合にとどめる。

私たちは嵐山市民スキー場の跡地を、嵐山本来の森林環境に復元し、その過程を市民とともに見守ることが、この場所に最もふさわしい活用方法と考えます。

市街地のすぐ近くにある本物の自然として、スキー場跡地に森林がよみがえれば、旭川市民や遠来の客が気軽に散策できる都市近郊林としての嵐山の価値はさらに高まります。都市公園的な施設や植栽、運営方針を持ち込むことは、嵐山がもつ自然的・社会的好条件を損ねかねません。長期的な視点に基づく市民の合意と整備方針が必要です。

具体的には、スキー場跡地を概観し、植生や地質に応じたゾーニングをもとに、環境復元や最低限の整備方針を定める必要があります。ゾーニングの候補には、青少年広場、スキー場斜面、下部の平地、オサラッペ川沿いの湿地などがあります。

大きな施設や自然改変は必要なく、歩道やわずかな補助的植栽が考えられます。スキー場跡地から中腹の青少年広場までは、散策路を整備すれば、散策や自然観察に市民の利用価値がさらに高まるでしょう。

私たち嵐山ビジターセンターは、帰化植物対策や定点観察による自然復元の記録などの面で、市の運営に協力したいと考えています。

自然回復の例としては、戦後まもなく嵐山頂上から東南東斜面に造成された初期のスキー場は、1年で閉鎖され、その跡地は特に人為を加えないまま、周囲の環境と同化して自然林が回復してきています。

以上のことから、嵐山ビジターセンターは、嵐山本来の価値を活かし、市民が気軽に本物の自然に触れることが出来るよう、嵐山市民スキー場跡地の環境復元について、次のことを提言します。

 

 

1.嵐山市民スキー場跡地の将来像については、「嵐山公園整備基本構想」の基本方針をもとに、嵐山本来の自然と歴史を大切にし、自然の復元力を最大限に生かして、多様な自然生態系の回復を目的としてください。

2.上記のために、環境に応じたゾーニングと復元目標、市民利用、歩道整備、維持管理などを含めた長期計画を策定してください。その際、十分な市民合意がはかられるよう、市と市民による検討組織を発足させてください。

3.長期計画策定後も、適切な維持管理が行われるよう、市民参加による運営組織や環境モニタリングを検討してください。